タクシードライバーの嫁日記

三つ星タクシードライバーの夫が見た夜のドライブものがたり

個人は大雪に負ける

夫は眠らない街を巡るタクシードライバー


三ツ星の個人タクシーを生業としている


酔って起きない、暴れるとか、支払いをゴネるお客さんは即、交番へお連れする


企業が危機管理に注力するのと同じで、迷惑なお客さんはお近くの交番へ。


先日の大雪の日はスタッドレスタイヤを履いていたのに、休業した


「これぢゃ、除雪車になってしまう」


個人だから車の故障や傷を直すのも全て自分持ち。

大きな台風や雪の日はそのリスクを考えて車を出さない


公共の交通機関が運休している時こそ稼ぎどきだと思うけど、そういう時ほど天気によるリスクの方が高かったり、思わぬ交通費を払わされるお客さんの八つ当たりに合うこともあるので精神的なリスク回避も必要だったりする


「携帯鳴ってるよ」

「アイツだから出なくていいや」

知り合いからの電話だった

「この時間に電話してくるってコトはタクシーがつかまらないんぢゃない?」

「アイツ、『料金安くしてくれない』って共通の知り合いに言ってたから配車しない」


知り合いだからって乗車料金を安くしてもらおうと思うのはあまいよ

わざわざ迎えに行って、送ってんのに「安くしてくれる」って?

ぢゃ、自分の給料を「安くしていい?」って言われて「よろこんで!」と言えるのか?って話ですよ


ディスカウントを求めるなら喜んで自分をディスカウントする気概を持ちましょう


いやなら電車で帰んな


お客さまぁ〜!おパンツがぁ〜

夫はタクシードライバー


「パトロール行ってくる」と出動するのは夜中


眠らない街、六本木、赤坂などを中心に仕事をしているのだけどね。


まぁまぁ 酔っ払いが多いのは仕方ない。


タクドラ夫は身長180cm以上あり大きな体躯に強面 (海好きの黒い顔)


「えっと、大丈夫ですかね?」

一見ドライバーに見えないので運転手を見ないで乗り込んだお客さんは不安に思うらしい。


三つ星ドライバーをなめんなよ〜

運転上手なんだぜー


人が乗っている時はとても丁寧な運転なのだよ


モデルさんかな?と思うほどスタイルの良い美しい女性が、これまた超イケメンの付き添われて乗車して来た。


白いミニのワンピースからカモシカの脚のような脚がのぞいている。


が、美しいその女性は泥酔していた。


超イケメンの彼のサポートの甲斐なく乱れる姿勢


アルコールの良い作用は緊張した筋肉や神経を緩めてくれるところ。

カラダもココロもふわっとさせてくれる。


そのモデルばりに美しい女性もお酒によって肉体が弛緩していた。


イケメン彼の咳払いのカバーも虚しく、弛緩した肉体から吐き出されるオナラの音。


経験のあるタクドラ夫は思った。


「あ、きてる」と。


素敵なマンションの前に到着して、彼女を先に降ろして支払いするイケメン彼氏


側溝の段差に躓いて転ぶ彼女


ミニワンピからのぞいていたのはカモシカの脚のような脚だけでなく、その先の白いおパンツまでのぞいている。


降車したお客さんがケガでもしたらたいへん!


タクドラ夫は見守った。


確認出来たのは起き上がる彼女ではなく、丸見えの白いおパンツから溢れ出すウンチョス君を。


大丈夫。

きっとイケメン彼氏がなんとかしてくれる!


そう思ったタクドラ夫はその場を離れた。


車の中でされなくて良かったよ〜


出モノ腫れもの所構わず、とは言うけどタクシーの中では危険です。


清掃代を請求される場合もあるからね。


座席を取り外して清掃するとなったらどのくらいの支払いになるのかしら?


お腹壊していたお客さんに漏らされた同業者はその後の売り上げ分も含め15万いただいたそうだ。


吐くのも同様。


お気をつけくださいましね〜









「お客さまは神様」とは言うけれど

お客様は神様です。


とは、言うけれど困った神様ばかりの話しになってしまうのね。


わりと多い困ったお客さんのタイプは指示された目的地に到着しても眠り込んでしまい起きてくれない神様。


タクドラ夫(タクシードライバーの夫、の略ね)は電車が走っていない夜中の出動で、その時間帯は稼ぎ時でもあるのね。


そんな時に起きてくれないと次の仕事が出来ないし、帰車することも出来ない。


どんなに大きな声を掛けても、揺すっても突いても起きない場合はいくら神様でもこーするのです。


→最寄りの交番に行く、もしくはおまわりさんを呼ぶ。


特に起きない女性の場合は困るのです。

触れないから。

起こそうと手で触れて揺すって、「痴漢された!」と逆ギレされる事もあるからね。


酩酊した神様を裁いてくれるのはおまわり閻魔様なのだ。


おまわりさんも慣れたもので、


「ドライバーさん困っているから起きなさいよ」


って、叩き起こして料金の支払いまで確認して降ろしてくださる。


いざという時には武闘派になるおまわりさんは日頃肉体を鍛えているからね。

そこは割と強めに。


それでも起きない神様がいらした。


引きずり降ろそうとしても脚で踏ん張って降りない。

そこまで踏ん張れるなら起きてるんぢゃ?と思うのだけど、意地でも降りない。


困ったおまわりさん、神様の財布から免許証を取り出して本人確認をすると、

「あぁ、この人ね」

と言って登録されている自宅に電話して神様の奥様に迎えに来てもらった。


どうやら前科があるようだ。


「主人がまたご迷惑をおかけして申し訳ございません」

「あなた、帰りましょー」

それまで意地でも車から降りなかった神様は神奥のひと声でおとなしく降りて帰って行った。


甘えん坊だな。


おまわりさんのお世話になりたくなかったら、正体不明になるまで呑まないでちゃんと支払い、降車することね。


「〇〇交番までお願いします」

酩酊したお友達を代金まで託し行き先も指定される常習犯もいるけど、その場合は乗車をお引き受けします。


そこで閻魔さまがすぐに裁いてくださるからね( ̄∀ ̄)





「訴える!」その2

六本木は世界屈指の不夜城


眠らない街は世界中から人が集まる魑魅魍魎の街でもあるよ。


「タクシー代をぼったくられた!」とクレームが入った。


今ではカードやICカードでも支払いができて便利なりましたね〜


ひどく酔っ払ったご主人の財布から27万円ものカード払いのレシートが出て来た。

六本木から大宮までの乗車賃が27万円もする筈がない!と。


送り先と外観の特徴などをを教えてもらえれば乗車場所やその時の様子など、大抵は覚えているタクドラ夫。日報もちゃんとつけているからね。


センターがその仲介役をするのだけど、その時は珍しくクレームを入れて来た奥さんと直接、電話で説明していたような気がする。


アメリカ人のご主人ね、

両脇を屈強なメンズ2人に抱えられてタクシーに乗り込んで来たわけ。

もちろん暴れることもなく、到着、支払い、降車もできたワケだけど、何処で飲んでいたのか記憶にない、と。


大宮までの正規料金のレシートも出て来て、ぼったくりタクシーの誤解はすぐに解けたのだけど、27万円ものレシートに興奮覚めやらぬ奥さんの質問責めにあうタクドラ夫。


そんな記憶失くす程バカ酒を飲む人ではないそうで、「27万も飲むはずがない!」って。


そんなコト、タクドラに言ったってね〜


乗車してきた様子をひたすら説明するタクドラ夫。


酒癖が良いひとでも、ドラッグ的なものが入った酒を出され知らずに飲んだら?


たぶん、そーゆーコト。


魑魅魍魎の街で遊ぶ時はお気をつけあそばせ



「訴える!」だとぉ⁈

世には酒グセが悪いひとがいますが


酒グセが悪いひとはタクシーに乗るとやらかしますね。


酒グセにもいろいろタイプがありますけどね、

「酒が入ると人格が変わる」のはいけない。


酒で人格が変わった、と感じた時には本人の意識が既に無い。

本人の意識がないから、酒が醒めて意識が戻った後に「暴言暴力をふるった!」と言われても記憶がないから「はて?」なのね

記憶に無いものは反省しようがないから悪い酒グセは治らない。

しかも、そーゆー人にかぎって酒が好きとくるから始末に負えない。


六本木から乗車したその男Xは大手出版社のタクシーチケットを黄門さまの印籠のようにかざして行き先を告げた。

既に呂律がまわらない感じのXにトラブルの匂いを感じたタクドラ夫は行き先を確認しながら目的地へ急ぐ。

目的地辺りを確認して到着を告げると

「場所が違う!」と怒り出したX氏。

駆け出しのドライバーぢゃあるまいし、トラブル臭プンプンの乗客にはトラブルを避けるべく対策をしているタクドラ夫。

X氏は暴れたね〜

怒鳴り散らして、ドライバーシートや乗降ドアを蹴りまくって、自動ドアを壊しやがった。

興奮してるX氏、そのままタクシーのレシートに記入されているセンターにクレームを入れて

「ドライバーを訴える!」と。


そーゆー場合はちゃんと調査が入るの。

ちゃんとね。


タクシーチケットはX氏を接待した大手出版社のもので、そちらにも、X氏の会社にもちゃんと調査が入って、その事件は関係者に知れ渡ることになった。

そしてタクドラ夫の

「耳元で鼓膜破れるくらいの大声で怒鳴られ、商売道具のタクシーのドアまで壊された。訴えたいのはこちらです」の一言でクレームを取り下げ、逆に謝罪して来た。


接待先のタクシーチケット使って、何やってんだよ、Mr.X !


しかし、人格が変わってしまうほどの悪い酒グセは治らないざんしょ〜


「訴えてやる」事件の翌年、そのMr.Xはまたもやタクシードライバーに暴行して逮捕され、お勤めの大手企業を懲戒免職となった。

新聞記事になったくらいの事件だったのね。


叫喚地獄に堕ちても記憶にないから酒グセは治らないという。


「酒グセ良くないよ」と言われているひとはもう呑まない方がいいと思うよ。








三つ星タクシーって知ってる?

夫は都内で個人タクシーを生業としている。


個人タクシーはその都道府県で台数が決められているので資格を取っても廃業する人がいないと個人タクシーの看板をもらえないらしい。

(勝手に個人タクシーにはなれないんだね)


三つ星は優良ドライバーに与えられる証らしく、車の上ランプに★が3つ並んでいるのが印。


タクシー協会がその優劣を決めているみたいだけど、例えば駅のタクシー乗り場で優先的に待ちレーンに並べる、とか。

★★★の特典て、そんなもの。


夫は三つ星であることを別段喜んでもいなくて所属する協会から三つ星ランプに替えるよう再三指導されるまで★無しだった。

★が付いているかどうか、なんて気にしてタクシー止める人っているのかしら?

それより、より気持ちよくタクシーを利用できるか?という方が利用者は気になるものでしょう。


優良ドライバーの基準は無事故、無違反、ノークレーム。

サービス業でもあるから、ノークレームね


優良の三つ星ドライバーである夫だけど、今までに2回クレームの電話がセンターに入ったコトがある。


後に先方がクレームを取り下げた、トンデモクレーム⁈


そろそろ夫を起こして仕事に出る準備しなきゃだわ


つづく。